ビジュアルシンキングのサイトで公開した新着コンテンツを、セルフライナーノーツで紹介します。
それがどんな理由であれ
Jリーグが2月に「気候アクション」の特設サイトをローンチしました。気候変動に対して、Jリーグが目指すゴールやできることなどを伝え、自治体、企業、サポーターに協力を促しています。
気候アクション自体は、昨年スタートしたとのことで、たとえば2023シーズンは全公式戦で温室効果ガス排出の一部について、カーボン・オフセットを実施したそうです。
このJリーグの動きは、世界のリーグとも合っていて、たとえばUEFA(欧州サッカー連盟)は先日、サッカーに特化した「カーボンフットプリント測定ツール」を発表しています。
プレミアリーグもJリーグが「気候アクション」サイトを新設したのと同じ2月に、環境・サステナビリティに関する新しいステートメントを発表し、24/25シーズン末までに環境・サステナビリティに対する方針を策定することや、25/26シーズン末までに温室効果ガス排出量のデータセットを作成することを各クラブに課しています。
このようなサッカー界の変化は、ビジネスの世界で企業に起きていることと同じです。少し話はずれますが、2022年の『フットボリスタ』の記事にこういう見方もという内容があったので紹介します。
記事のタイトルは「サッカーに政治を持ち込むな」の根源的矛盾。人種差別、ロシア除外、Japan’s Wayに潜む複雑性」で、神戸大学の小笠原博毅教授にサッカーと政治についてインタビューしたものです。その中で、Black Lives Matterの膝つきジェスチャーがサッカーの試合で許容されていることについて、次のように話しています。
この動きはまさに、何が持ち込んでいい政治で、何が持ち込まれたくない政治なのかを当事者である選手が決めることはできず、FIFAやUEFAを含めた各地域のサッカー統括団体などが決めていることの一側面です。ここでトリッキーなのは、例えばBLACK LIVES MATTERに呼応する膝つきのパフォーマンスが許されているのは、これを最初に行った(NFL選手の)コリン・キャパニック以降、(キャパニックをサポートする)ナイキが取ってきたポリティカリーコレクト(政治的に寛容)な路線が、グローバル資本主義における1つのエモーショナルな商品になるからだということです。またFIFAの判断は、単に資本の流れにおもねるというより、それによってサッカーのブランドイメージが上がり、政治的に正しい方向に進むという時の資源になるということでもあります。
サッカーを商品・サービスとして見た場合に、FIFAやUEFAがサッカーに何を持ち込んで、何を持ち込まないかという判断の中で、気候アクションは必要なものと考えられているのはそうでしょう。
こうした側面はありつつ、実際に気候変動によって気温が上昇したり、大雨など天候が不安定になることで、これまでのように試合が行えない状況も出てきているのも確かで、資本主義的な理由と現実的な理由が入り混じったものになっています。
トップリーグのクラブ、代表の国際試合は、この大きな潮流の中で具体的なアクションに進むと考えられる一方で、アマチュアクラブながら動き出しているチームもあります。
レスターのニルヴァーナFCは、イギリス初のアマチュアクラブによるネットゼロ実現を目指しています。一体それはどんな取り組みなのでしょうか。
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