なぜ作ろうと思ったか
女子サッカーワールドカップ開幕にあたり、男子ワールドカップの賞金と比べることで、なんとなく知るだけだったサッカー界の男女格差がわかると思い、調べたくなりました。
リサーチで難しかったこと
男子ワールドカップの賞金総額は、2022年カタール大会で4.4億ドル。それ以前の数字もすぐに見つかりました。
2006年:2.4億ドル
2010年:3.5億ドル
2014年:3.6億ドル
2018年:4億ドル
2022年:4.4億ドル
一方、女子ワールドカップについては、過去の大会はスムーズにわかったものの、今年の大会の賞金総額がいくらか確認するのに手間取りました。
2007年:580万ドル
2011年:750万ドル
2015年:1500万ドル
2019年:3000万ドル
2023年:???
FIFAのメッセージでは、2023年の女子ワールドカップでは1.5億ドルを計上したとあったものの、メディアによっては1.1億ドルと書いてあるところもあり、どういうことなのか理解するには賞金の構造を知る必要がありました。
一番役に立ったのが、オーストラリアプロサッカー選手協会(Professional Footballers Australia)の記事で、まさに僕が混乱したことについて触れていました。
You might have seen different figures reported for the total WWC Prize Money on offer in 2023: for example, $110m and $152m.
2023年の女子ワールドカップ賞金について、1億1000万ドルや1億5200万ドルなど、異なる数字がレポートされているのを見たことがあるかもしれません。
この記事では1.5億ドルと言った場合には、「賞金」以外に「準備金」「クラブ特典」が含まれていると指摘しています。
賞金:チームの順位によって各国のサッカー協会に支払われるお金(選手には協会から分配)
準備金:ワールドカップ開催前に出場国のサッカー協会に支払われるお金
クラブ特典:ワールドカップに出場する選手が所属するクラブチームに支払われるお金
賞金だけで見れば、今大会1.1億ドルで、それ以外も含めると1.5億ドルになります。
同じようにして2022年男子大会を見ると、賞金は4.4億ドルで、それ以外も含めると約7億ドルとなり、男女の差は大きくなります。
2023年女子ワールドカップ
賞金:1.1億ドル
準備金:3100万ドル
クラブ特典:1150万ドル
2022年男子ワールドカップ
賞金:4.4億ドル
準備金:4800万ドル
クラブ特典:2.09億ドル
公平のため伝えておくと、FIFAの公式サイトの記事も、1.5億ドルは「準備金」「クラブ特典」を含んだものと書いてあります。
その一方で、2019年と比べて2023年に用意した額は10倍という記述もあるため、わかりにくくなっています(2019年の賞金1500万ドルと、2023年の全てを含む1.5億ドルをどれくらい意図的なのかはわからないが比べた表現をしている)。
A total package of USD 152 million is on offer at this year's tournament – three times more than at France 2019 and over ten times more than the amount offered at Canada 2015.
今大会では、総額1億5200万ドルのパッケージが用意されている。その額は、2019年フランス大会の3倍、2015年カナダ大会の10倍以上である。
こうしたリサーチのプロセスを経て、2023年女子ワールドカップの賞金総額は1.1億ドル、2022年男子ワールドカップは4.4億ドルと4倍違うことがわかりました。
デザインでこだわった点
男女の賞金の差が数字ではっきりわかる内容だったので、それがすんなり対比できればいいと思いました。
表現で一番こだわったのが男女の配置と色で、「女男格差」と言わずに「男女格差」と言うように、言葉に合わせて男子のデータを最初(左)に配置して、女子のデータを右にした方が直感的かもしれません。
それに対して、女子ワールドカップを主役にしたいために、あえて左側に持ってきました。
あわせて、色合いも水色・ピンクの配色をステレオタイプのイメージに反するようにし、配置と色で若干の違和感を与えるようにしています。
なお、ヘッダー部分のイラストでは女子をピンク、男子を水色で表現していますが、これは実際に2019年女子ワールドカップで優勝したアメリカ代表のスター選手ミーガン・ラピノー選手が髪をピンクに染めていたこと、2022年男子ワールドカップ優勝のアルゼンチンのユニフォームカラーが水色だったことからそうしています。