映画のどこに注目?
映画にはもちろん人それぞれの楽しみ方があってしかりですが、最近、僕なりの楽しみ方というのができてきて、それはインフォグラフィック制作とも深く関わることなので、今日はひとつ、それについて書こうと思います。
映画を観る時に、どこに注目するのか──僕の場合は、登場人物の関係とその変化に注目して観ています。
物語が動く時
映画にはストーリーがあります。では、ストーリーはどうやって展開するのか。ストーリーは、登場人物が互いに作用することで進んでいきます。
たとえば、登場人物Aが家族をBに殺されて、Bに復讐しようと考える。あるいは、登場人物AとBは仲良く暮らしていたのに、そこにCが現れて、関係に変化が生じる。
これを、脚本づくりのバイブル『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』では次のように書いています。
脚本とは、普通、キイ(鍵)となる事件を綴るものであり、ストーリーは、その事件に対する登場人物のアクションとリアクションによって展開する。
ここで言う事件とは、何か他のものに関連して起こる出来事や事柄と言った意味です。出来事を巡って登場人物はやりとりをします。
映画には親子、家族、仲間、恋人、宿敵、師弟、隣人など人間関係が出てきて、事件をきっかけに喧嘩したり、協力したりするようになる。僕が面白いと思うのは、登場人物の関係が、そうやって物語の初期段階と、途中や終盤で変わっていくところ。
たとえば、王に仕える主人公のもとに、親の古くからの友人が訪れ、実は王が親の仇だと教える。王と主人公の主従関係だったものが、そこで親の仇に変わる。
関係と、関係の変化──これが僕が映画を観る時に注目する点で、「この映画は誰々と誰々の関係が最初●●だったのが、●●に変わっていく話」といった具合に、どういう映画だったかを関係の変化という視点で整理しています。
それがインフォグラフィックとどうつながるのか?
まもなく書き終わる新刊『インフォグラフィック制作ガイド(仮)』では、サブタイトルに次の言葉を予定しています。
──「関係」を可視化する情報デザインの手引き
インフォグラフィックとは何かを考えた時、他のグラフィック表現と決定的に違うのは物事の「関係」を表現することにフォーカスしている点です。
たとえば、路線図インフォグラフィックは駅と駅、路線と路線など情報の関係を表現しています。
映画の脚本は「関係」をストーリーに落とし込みますが、インフォグラフィックの場合は「関係」をグラフィックで表現します。
人物相関図はその最たる例で、同じ視覚表現でも映画が「物語」を伝えるのに対し、相関図が伝えるのは「情報」です。
そうした違いはあれど、僕がついつい映画でも「関係」に注目して観てしまうのは、インフォグラフィック好きとしてのさがなのかもしれません。
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ビジュアルシンキングのオンラインショップで、小冊子のダウンロード販売をはじめました。vol.1では、代替肉についてまとめています。