ビリー・アイリッシュの場合
パンデミックでミュージシャンの来日公演がとだえていたのがようやく明けた2022年夏──ビリー・アイリッシュの来日がありました。
その際、マイボトルへの給水サービスがあり、ペットボトルやコップなどのプラスチック削減に取り組んでいたのがライヴパフォーマンス以外で印象に残っています。
この稿を書くにあたって、あらためて来日公演のアナウンスを見てみると、チケット料金の一部(¥200)はビリー・アイリッシュのサステナビリティ・パートナー「REVERB」への寄付になっていました。
REVERBとビリー・アイリッシュは2019年にサステナビリティ・パートナーになり、以来、気候変動、環境に配慮したツアーに取り組んでいます。
このパートナーシップのもと、たとえば2023年、シカゴで開催された音楽フェス「ロラパルーザ」では、ステージの電力の一部を、仮設の太陽光発電システムを使って供給し、話題になりました。
テイラー・スウィフトの場合
一方、テイラー・スウィフトはプライベート・ジェットの利用が非難にさらされています。世界銀行が使うデータによれば、アメリカの国民一人当たりのCO2排出量は2020年に13トンでしたが、先日、テイラー・スウィフトが東京公演からスーパーボウルへとプライベート・ジェットで移動した際のCO2排出量は約40トンとみられています。
「Taylor Swift Can Be the Climate Hero We Need Now」という記事では、テイラー・スウィフトは気候のアンチヒーローからヒーローになるチャンスがあるとして、彼女の影響力を気候変動に活かしたらどうかと提案しています。
なお、今回の「The Eras Tour」に対して、テイラー・スウィフトの広報は彼女がツアーのフライトに必要な分の2倍のカーボン・クレジットを購入していると説明しています。また、2月7日に所有するプライベート・ジェット2台のうち、1台を売却したそうです。
カーボン・クレジットは、自分が排出したCO2を、お金を払って別のところで吸収・削減したCO2と相殺してもらう仕組みですが、本来は排出する方も削減努力をした上で活用するはずが、そうなっていないとの指摘もあります。
炭素除去の課題
いずれにせよ、温室効果ガスの吸収・削減は欠かせないもので、大気中の二酸化炭素を回収して保管する「Direct Air Capture(DAC)」技術も検討されています。
ただ現状は回収のためにエネルギーをたくさん使うこと、コストが高いことが課題です。でもそれを解決しようとするスタートアップもあり、Gristの記事でその一つ「Graphyte」を知りました。
Graphyteは、植物の光合成に注目し、効率的な回収を考えました。植物は光合成で二酸化炭素を吸収し、枯れて微生物によって分解されたり、燃やされることで再び二酸化炭素を放出します。
そこで、Graphyteは木材産業や農業から出る植物の残りかすを集めて、そこから二酸化炭素が再放出しないようにすることで、大気中の炭素を減らそうとしています。この方法であれば、二酸化炭素の回収のために余分なエネルギーやコストを使う必要がありません。これは期待できるかもと思って、炭素除去のプロセスをまとめてみました。
Graphyteの炭素除去プロセス
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